農地売買等の基礎知識

 

農地の売り買い貸し借り贈与をするときは農地法の許可が必要です。

農地を耕作目的で売買したり貸借したりする場合は、一般的な土地取引とは違い、農地法第3条による農業委員会の許可を受ける必要があります。

農業委員会の許可を受けないまま売買や貸借を行った場合は、その効力は生じないとされていますので、対価を支払ったとしても所有権や賃借権は取得できません(農地法第3条第7項)。また、農地法第3条第1項違反となり、個人にあっては3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人にあっては1億円以下の罰金という罰則の適用があります(農地法第64条、第67条)。

POINT

都市計画区域の内外、市街化区域の内外を問わず、すべての農地が対象になります。

農地法第3条許可の申請手続き

農地法第3条の許可を受けたい場合は、許可申請書に所定の事項を記載し、必要書類を添付した上で、売買・貸借・贈与の対象となる農地を管轄する農業委員会に提出します。

なお、農地法第3条許可申請に必要となる書類(証明書・資料など)や受付期間、手続き方法などは各農業委員会によって取り扱いの運用が異なりますので下記をご参考下さい。

農地法第3条の許可の基準

一般の基準(売買・貸借の場合)

以下の要件をすべて満たす必要があります(農地法第3条第2項)。 

①全部効率利用要件

耕作又は養畜の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数、技術等からみて、権利を取得しようとする者(その世帯員等含む)が農業経営に供すべき農地のすべてについて効率的に利用して耕作等をすると認められること。

※農業経営に供すべき農地・・・新たに権利を取得しようとする農地、既に所有している農地(他人に貸している農地除く)、借りている農地などです。

②農地所有適格法人(農業生産法人)要件

法人が権利を取得する場合は、その法人は農地所有適格法人(農業生産法人)であること。

③農作業常時従事要件

農地の権利を取得しようとする者(世帯員等含む)が農業経営に必要な農作業に常時従事すると認められること。

※常時従事・・・原則として年間150日以上農作業に従事している場合に常時従事していると認められます。

④下限面積要件【令和5年4月1日より廃止】

権利取得後の経営面積が北海道では2ヘクタール、都府県では50アール(農業委員会が別段の面積を定めた地域についてはその面積)以上であること。

⑤転貸等の禁止要件

所有権以外の権原に基づいて耕作の事業を行う者がその土地を、貸し付け、又は質入れしようとする場合でないこと。

⑥地域調和要件

権利を取得しようとする者(又はその世帯員等)が取得後に行う耕作等の事業の内容、農地の位置からみて、農地の集団化、農作業の効率化、その他周辺地域の農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障が生ずるおそれがないこと。

解除条件付貸借の基準(貸借限定)

農地の貸借(使用貸借権又は賃借権の設定)の場合に限り、緩和措置があります。次の要件を満たしていれば、個人・法人にかかわらず上記「一般の基準」の②農地所有適格法人(農業生産法人)要件と③農作業常時従事要件が適用されず、解除条件付貸借として権利を取得できます(農地法第3条第3項)。

  1. 農地の権利を取得後、適正に農地を利用していない場合に使用貸借権又は賃借権を解除する旨の条件が書面による契約に付されていること
  2. 権利を取得しようとする者が地域の他の農業者と適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業を行うと認められること
  3. 権利を取得する者が法人の場合、当該法人の業務執行役員のうち1人以上が耕作又は養畜の事業に常時従事すると認められること

 

●農地等の利用状況報告書

上記の解除条件付貸借によって許可を受けた者は、農地を適正に利用することを担保するため、毎年(毎事業年度の終了後3か月以内に)、農地の利用状況を農業委員会(農地法で許可を受けた場合)に報告しなければなりません。なお、適正に利用しない場合は許可を取り消されることがあります。

 

●報告する内容

  1. 氏名・住所(法人は名称・主たる事務所の所在地・代表者の氏名)
  2. 使用貸借権又は賃借権の設定がされた農地の面積
  3. 作物の種類別作付面積・栽培面積、生産数量・10a当たりの収量
  4. 耕作する農地が周辺農地の農業上の利用に及ぼしている影響
  5. 地域の農業における他の農業者との役割分担の状況
  6. 法人の場合は、その法人の業務を執行する役員の内、その法人の耕作の事業に常時従事する者の役職名・氏名・その法人の行う耕作の事業への従事状況
  7. その他参考となるべき事項

農地の賃貸借契約書

農地の貸し借りを行う場合は、その存続期間や借賃等の額、支払条件などの契約内容を文書化しなければならないとされています(農地法第21条)。つまり、農地賃貸借契約書を作成しなければなりません。

農地等の賃貸借の解約

農地の貸し借りを終了させるには、原則として都道府県知事又は指定市町村の長の許可を受けることが必要です(農地法第18条第1項)。ただし、賃貸人と賃借人の当事者双方が話し合いにより合意解約を行う場合で、農地の引渡しの時期が解約の合意の成立後6か月以内にある旨が書面において明らかな場合は、許可を受けなくても解約することができます。

なお、その場合は30日以内にその旨を農業委員会に所定の事項を記載した通知書で通知しなければなりません(農地法第18条第6項、施行規則第68条)。

 

農地法第18条の許可の基準

下記のいずれかに該当しなければ許可されません(農地法第18条第2項)。

  1. 賃借人が信義に反した行為をした場合(借賃の滞納、無断譲渡・転貸、無断転用、田畑転換、不耕作など)
  2. 農地等を転用することが相当な場合
  3. 賃貸人の自作を相当とする場合
  4. 農業生産法人の要件を欠いた法人から賃借地の返還をうける場合
  5. その他正当な事由がある場合(賃借人が離農する場合など)
行政書士佐藤陽介事務所 TEL 023-664-1077
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